顎変形症に対する外科的矯正治療
上下の顎骨に大きなズレがあり、矯正治療単独では機能的なかみ合わせが改善できない場合には、外科手術を併用した矯正治療(=外科矯正)が必要となります。具体的には、著しい上顎前突、上顎後退、下顎前突、下顎後退、開咬、顎偏位症例などがあります。
治療の手順としては、マルチブラケット装置を用いて手術前矯正(1~2 年間)を行った後、手術について外科医と一緒に綿密な計画を立てた上で外科手術を行います。その後、かみ合わせをより詳細に確立していくための手術後矯正(1~2 年間)を行います。
なお、顎関節に問題がある場合には、上記に加えてスタビライゼーションスプリントで顎関節の反応を診た上で矯正治療を開始します。手術前には必要に応じて、顎関節の位置(=顎位)を安定させるためにスプリント治療を行う場合があります。その結果、手術の移動量や移動方向などを正確に診断することができます。そして、手術に使う顎の位置決めのためのシーネを矯正医が作成します。
※ 外科矯正の治療費について
顎変形症に対する外科的矯正治療は、「顎口腔機能診断施設」の認定を受けている施設に限って健康保険が適用されます。当院も国の定める施設として認められており、健康保険が適用となります。
治療例1(上顎前突症)

治療前
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治療後
主訴 | 出っ歯、歯並び |
診断名 | 上顎前突症、ハイアングル |
年齢 | 28歳 |
使用装置と治療方針 | マルチブラケット装置(唇側矯正)、![]() 外科手術併用(上顎骨Fe-FortⅠ型骨きり術、オトガイ形成術) |
治療期間 | スタビライゼーションスプリント8ヶ月(通院回数:8回) マルチブラケット治療3年6ヶ月(通院回数:42回) |
治療費用 | 保険適用 |
リスクと副作用 | 矯正治療によって、歯根吸収やブラックトライアングル(歯と歯茎の境目の隙間)が生じる可能性があります。 |
治療例2(下顎前突症)

治療前
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治療後
主訴 | かみ合わせ、アゴが痛む |
診断名 | 下顎前突症、ローアングル |
年齢 | 23歳 |
使用装置と治療方針 | マルチブラケット装置(唇側矯正)、![]() 外科手術併用(上顎骨Fe-FortⅠ型骨きり術、下顎骨SSRO、オトガイ形成術) |
治療期間 | スタビライゼーションスプリント8ヶ月(通院回数:8回) マルチブラケット治療2年3ヶ月(通院回数:27回) |
治療費用 | 保険適用 |
リスクと副作用 | 矯正治療によって、歯根吸収やブラックトライアングル(歯と歯茎の境目の隙間)が生じる可能性があります。 |